写真家 浅田政志さん Specialインタビュー!

「人と鉄」というテーマを聞いて、どう思いましたか? 「人と鉄」というテーマを聞いて、どう思いましたか?

生き物と生き物じゃないもの。
温かいものと冷たいもの。

最初はそんな相反したイメージを持ちました。でも鉄と一口で言えど、色んな形に変わり続け、生活のまわりにたくさんあるものだと理解してからは、ふたつを遠くないものに感じます。

今まで撮った写真の中で最初に浮かんだのは、息子が小さい頃、公園の鉄棒やジャングルジムで遊んでいた様子。10歳になった今は、友達と自転車で遊びに行きます。自転車が今の息子にとって欠かせない鉄。

あらためて今回の「人と鉄」というテーマを心に留めて町を歩いてみると、こんなにも世界には鉄があるんだ!と気づかされます。

でも、「私、人を撮るの苦手で」って人、じつは多いんですよね。人自体を写さなくても、自分の影が伸びている瞬間でもいい。お子さんが思春期で撮らせてくれないという場合は、まずは背中だけでも。人の気配が感じられるだけで、写真にはもう一つの営みが生まれます。
あ、でも、そうやってどんどん引き算をしていくと、そもそもカメラの中にも鉄が使われているし、フォトコンに応募するのは人だから、すでに「人と鉄」かも(笑)!?
そんなふうに大喜利みたいに楽しみながら撮ってもらえたら嬉しいです。

浅田さんが撮影時に大切にしていることは? 浅田さんが撮影時に大切にしていることは?

一番は、被写体の人に喜んでもらうことです。
大人数でも、一人も欠けず全員にスポットライトが当たる撮り方を心がけています。

よく僕が面白いことを言って、笑わせているんだと思われがちなんですけど、じつは人を笑わせるのが苦手です。

じゃあなぜ、みんなが笑っている写真になるのかというと、被写体の人の中から面白い人を見つけるんです。その人に盛り上げ役を買ってもらい、目立たない人にはポーズを大袈裟にしてもらったり、顔をオーバーにしてもらったり。あとは、声。「せーの」の合図のあと、誰かのお祝いだったら、「おめでとう!」とか。写真に声は写らないけど、みんな本気で声を出してます。タイミングもはかれるし、現場がぐっと盛り上がるのでおすすめです。

そうやって、みんなで力を合わせて一発勝負!みたいな勢いで撮ると、すごくパワーのある写真になる。

僕一人だと、自分の感性の範囲内から出られないけれど、話し合いながら、相手のことがわかってくると、こんな撮り方ができるかも!?というアイデアが僕にも生まれます。
その日の被写体と僕だったからこそ、そうなった、という一枚が誕生する。だから、面白いことが言えなくても大丈夫!(笑)。

浅田式、目的ごとに4つのカメラ 浅田式、目的ごとに4つのカメラ

僕は、撮る対象によってカメラを使い分けてます。「浅田家」のような作品の時は、PENTAX67Ⅱ。仕事では、キビキビ撮れるCanon EOS R5。息子を撮るのはLeica Q2。高画質で小さいのもイイ。あともう一つ、「一日一枚」という縛りで9年間、日々の写真を撮り続けているんですが、これは、フィルムのコンパクトカメラを使っています。1ヶ月、1本のポジフィルム。人生をぎゅっと凝縮し、確実に思い出を残せる方法です。

今はスマホでもシャッターを押せば写るけど、一枚で表現できる世界はカメラによって無限大です。自分の性格と撮りたいものを考えていくと、このカメラ!というのが決まってくる。自分をその気にさせてくれるカメラと出会えたら、写真が変わるし、やる気も変わります!

フォトコン参加の皆様へメッセージ フォトコンの常識、とっぱらいます!? フォトコン参加の皆様へメッセージ フォトコンの常識、とっぱらいます!?

僕の「浅田家」の家族写真などは、演出写真といわれるもので、普通のフォトコンでは、かなり嫌がられます(笑)。写真の良さの一つにありのまま撮る、演出しないで撮る、という美学があるから。でも、映画や演劇にはシナリオがある。だから作り上げる写真があってもいいと僕は思っています。こういう写真は通りづらいだろうな〜と思うジャンルでも、ぜひ応募してください。

プロフィール

浅田政志 Masashi Asada
写真家。1979年三重県生まれ。日本写真映像専門学校研究科を卒業後、スタジオアシスタントを経て独立。2009年、写真集「浅田家」(2008年赤々舎刊)で第34回木村伊兵衛写真賞を受賞。2010年には初の大型個展、「Tsu Family Land 浅田政志写真展」を三重県立美術館で開催。2020年には著書の「浅田家」、および「アルバムのチカラ」(2015年赤々舎刊)を原案とした映画『浅田家!』が全国東宝系にて公開され、10年ぶりの新作、「浅田撮影局 まんねん」(2020年青幻舎刊)と「浅田撮影局 せんねん」(2020年赤々舎刊)を発表。新作個展「浅田撮影局」をPARCO MUSEUM TOKYOで開催した。
Instagram X