最初はそんな相反したイメージを持ちました。でも鉄と一口で言えど、色んな形に変わり続け、生活のまわりにたくさんあるものだと理解してからは、ふたつを遠くないものに感じます。
今まで撮った写真の中で最初に浮かんだのは、息子が小さい頃、公園の鉄棒やジャングルジムで遊んでいた様子。10歳になった今は、友達と自転車で遊びに行きます。自転車が今の息子にとって欠かせない鉄。
でも、「私、人を撮るの苦手で」って人、じつは多いんですよね。人自体を写さなくても、自分の影が伸びている瞬間でもいい。お子さんが思春期で撮らせてくれないという場合は、まずは背中だけでも。人の気配が感じられるだけで、写真にはもう一つの営みが生まれます。
あ、でも、そうやってどんどん引き算をしていくと、そもそもカメラの中にも鉄が使われているし、フォトコンに応募するのは人だから、すでに「人と鉄」かも(笑)!?
そんなふうに大喜利みたいに楽しみながら撮ってもらえたら嬉しいです。
よく僕が面白いことを言って、笑わせているんだと思われがちなんですけど、じつは人を笑わせるのが苦手です。
じゃあなぜ、みんなが笑っている写真になるのかというと、被写体の人の中から面白い人を見つけるんです。その人に盛り上げ役を買ってもらい、目立たない人にはポーズを大袈裟にしてもらったり、顔をオーバーにしてもらったり。あとは、声。「せーの」の合図のあと、誰かのお祝いだったら、「おめでとう!」とか。写真に声は写らないけど、みんな本気で声を出してます。タイミングもはかれるし、現場がぐっと盛り上がるのでおすすめです。
僕一人だと、自分の感性の範囲内から出られないけれど、話し合いながら、相手のことがわかってくると、こんな撮り方ができるかも!?というアイデアが僕にも生まれます。
その日の被写体と僕だったからこそ、そうなった、という一枚が誕生する。だから、面白いことが言えなくても大丈夫!(笑)。
僕は、撮る対象によってカメラを使い分けてます。「浅田家」のような作品の時は、PENTAX67Ⅱ。仕事では、キビキビ撮れるCanon EOS R5。息子を撮るのはLeica Q2。高画質で小さいのもイイ。あともう一つ、「一日一枚」という縛りで9年間、日々の写真を撮り続けているんですが、これは、フィルムのコンパクトカメラを使っています。1ヶ月、1本のポジフィルム。人生をぎゅっと凝縮し、確実に思い出を残せる方法です。
今はスマホでもシャッターを押せば写るけど、一枚で表現できる世界はカメラによって無限大です。自分の性格と撮りたいものを考えていくと、このカメラ!というのが決まってくる。自分をその気にさせてくれるカメラと出会えたら、写真が変わるし、やる気も変わります!
僕の「浅田家」の家族写真などは、演出写真といわれるもので、普通のフォトコンでは、かなり嫌がられます(笑)。写真の良さの一つにありのまま撮る、演出しないで撮る、という美学があるから。でも、映画や演劇にはシナリオがある。だから作り上げる写真があってもいいと僕は思っています。こういう写真は通りづらいだろうな〜と思うジャンルでも、ぜひ応募してください。